「ゴミ屋敷が増えている」という現状に対し、長期にわたり「放置」され、近隣住民に深刻な影響を及ぼすケースでは、最終的に「法的介入」が検討されます。しかし、この法的介入には多くの課題が伴い、問題解決を困難にしています。まず、法的介入の根拠となるのが「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空き家特措法)や、各自治体が定める「ゴミ屋敷条例」です。空き家特措法は、管理不全な空き家を「特定空家等」に指定し、自治体が所有者に改善を命令したり、行政代執行を行ったりすることを可能にするものです。ゴミ屋敷も、その衛生状況や危険性から特定空家等に指定されることがあります。また、近年では「ゴミ屋敷条例」を制定する自治体が増えており、これはゴミ屋敷に対する行政の権限を強化し、指導や勧告、命令、そして最終的な行政代執行をよりスムーズに行えるようにするものです。しかし、これらの法的介入にはいくつかの課題があります。最も大きな課題は「私有財産権の尊重」です。日本国憲法は、個人の財産権を強く保障しており、たとえゴミ屋敷であっても、所有者の同意なく行政が一方的に介入することは容易ではありません。行政代執行に至るまでには、住人への度重なる指導や説得、警告が必要であり、法的要件を満たすための証拠収集も重要となります。このプロセスは非常に時間と労力がかかり、問題が長期化する原因となります。次に、「費用徴収の難しさ」も課題です。行政代執行にかかった費用は、原則として所有者に請求されますが、ゴミ屋敷の所有者が経済的に困窮している場合や、行方不明である場合など、費用回収が困難なケースが多々あります。この費用は最終的に税金で賄われることになるため、自治体の財政を圧迫する要因となります。さらに、「住人の精神的な問題への対応」も法的介入だけでは解決できません。ゴミ屋敷の住人が認知症や精神疾患を抱えている場合、法的な命令を理解できなかったり、反発を強めたりすることがあります。法的介入は物理的な解決にはなりますが、住人の心のケアや再発防止といった根本的な問題には対応できないため、福祉的支援や医療的介入との連携が不可欠です。法的介入は、ゴミ屋敷の放置という深刻な問題に対処するための重要な手段ですが、その限界と課題を認識し、より包括的かつ人道的なアプローチとの両立を目指すことが、持続可能な問題解決には不可欠なのです。
放置されたゴミ屋敷への法的介入と課題